調剤過誤防止システム「ミスゼロ子」を ピッキングから在庫管理までフル活用

エムアイ薬局は、調剤過誤防止システム「ミスゼロ子」をピッキングから在庫管理までフル活用し、薬剤師の業務負担を軽減することで、服薬指導や在宅医療に注力するパワーを生み出している。さらに、薬剤師による独自のダブル監査を実施し、 調剤過誤防止の徹底を図っている。

今年で創業20周年を迎えるエムアイ薬局は、愛媛県松山市の 郊外、瀬戸内海と山にはさまれた静かな町に立地する。60床規 模の病院に近接し、同病院からの処方箋が90%弱を占めている。 創業者は有限会社アゴラの代表取締役会長/薬剤師の家串稔氏で、現在は息子の薬剤師、 家串明孝氏が同社代表取締役社長を務めている。

 「アゴラはギリシャ語で、人が集まる広場という意味。薬局は1人で運営できるものではなく、そこに集う全員の力がないと、患者さんのためになる調剤はできません」と家串稔氏は、社名に込めた想いを語る。現在、常勤薬剤師5人、常勤事務5人、 非常勤事務1人のスタッフ構成で運営。処方箋応需数は60~70 枚/日、備蓄医薬品目数は約1,800品目、ジェネリック医薬品の割 合は80%超。高齢の利用者が比較的多いという。 

エムアイ薬局の特徴は、薬剤師による独自のダブル監査を実施していること。処方箋と照らし合わせる監査と、投薬時に薬歴 と患者の話を総合して判断する監査を実施し、調剤過誤を防いでいる。創業者の家串稔氏は、エムアイ薬局設立前の愛媛大学薬剤部勤務時代に散剤の監査システムを自ら開発した実績があり、「正確な監査」を重視していたという。薬剤師によるダブル監査は法令上求められていないが、家串明孝氏は「父の想いを継いで、今後も続けていく」と語る。 

家串稔氏は、薬剤のピッキング時における調剤過誤防止の必要性にも早くから注目。2005年、学会に参加した同氏が、展示されていた調剤過誤防止システム「ミスゼロ子」に惚れ込み、導入を即決した。 「正確な調剤を目指す私の想いを『ミスゼロ子』がかなえてくれると感じました」と家串稔氏は振り返る。

一方、他の調剤薬局で現場経験を積み、3年前からエムアイ薬局で薬剤師を務める家串明孝氏は、「他の調剤薬局では「ミスゼロ子』のような機器は利用しておらず、逆に手間がかかるのはないかと感じた」という。ところが、すぐに「手間はほとんど問題にならず、むしろ、何物にも代え難い安心感をもたらしてくれる」と思うようになった。 

「以前、救急医療に対応した薬局でも勤務していたのですが、 そこは薬剤師1人ですべてをこなす必要があるのに『ミスゼロ子』 がない。自分が正確に調剤できたのか、時々、不安に襲われ、 改めて『ミスゼロ子』の存在の大きさに気づかされました」(家串 明孝氏) 

エムアイ薬局では、ピッキング時に「ミスゼロ子」を使う場合と、 集薬後に「ミスゼロ子」を使う場合があり、混雑度に応じて柔軟に使い分けている。非薬剤師もピッキングに参加しているので、「ミ スゼロ子」の存在はますます心強いという。また、エムアイ薬局では、散剤の秤量監査や発注まで行える在庫管理機能としても 「ミスゼロ子」を活用している。 

「特に棚卸の時間短縮に威力を発揮しています。以前勤務していた薬局では、現在よりも備蓄医薬品が少なかったのですが、 棚卸の日は深夜までかかりました。いまは棚卸にかかる時間は 3時間程度で済んでいます」(家串稔氏) 

負担が軽減された分、本来業務である服薬指導や地域ニー ズのある在宅医療に時間を割くことができるようになったという。 

「在宅医療では、ケアの専門家たちと協力し、患者さんの生活の様子をお聞きするようにしています。『ミスゼロ子』の安心感と業務の効率化があるので、手間のかかる在宅医療にも取り組む余裕が生まれ、地域に貢献できています」と家串明孝氏は話す。 

DI202109

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