「ミスゼロ子」で調剤ミスが激減!対物業務の質の向上と効率化を両立

千代田病院薬剤部では、分業化とシステム化を車の両輪として対物業務の効率化を推し進め、薬剤師でなければできない
業務の時間確保に取り組んでいる。調剤ミス防止システム「ミスゼロ子」もこの流れの一環として導入を決めた。運用後
には薬剤のピッキングミスがほとんどなくなり、薬剤師に安心感をもたらすツールとして歓迎されており、職員が働きやす
い環境を実現している。

分業化とシステム化で円滑な業務運営
 社会医療法人泉和会千代田病院は、宮崎県日向市に位置する地域の中核病院である。日向市は人口約5万8,000人の穏や
かな町で、海に面しており、サーフィンの国際大会も開催されている。千代田病院は1960年に千代田外科医院として開設され、
現在は196床の総合病院となっている。救急医療に力を入れており、宮崎県内では初の社会医療法人として認定された。
 同病院の薬剤部は、薬剤師5人、業務支援クラーク3人(いずれも常勤)で運営している。入院処方箋は内服薬が約1,900枚/月、
注射薬が約1,700枚/月、採用医薬品目数は約2,000品目(うち院内950品目)で、外来化学療法は73件/月。地域の調剤薬局
との合同研修会も実施している。
 「病院薬剤師は、病棟、外来、あるいは在宅で、今後益々、対人業務に注力していくことが求められると思いますが、そのためには対物業務の効率化は欠かせません。しかし、対物業務の質が下がっては安心安全の薬物療法は提供できませんので、いかに質を維持したまま効率化するかが重要になります」と同病院薬剤部部長の甲斐晃弘氏は話す。 全国で慢性的な病院薬剤師の不足が問題視される中、千代田病院でも薬剤師の確保が課題となっている。「少数薬剤師でも業務が円滑に進行するように、分業化とシステム化を車の両輪として対物業務の効率化に取り組んでいます。薬剤師の判断が不要な業務は業務支援クラークに委託し、機械で処理可能な業務はな
るべく機械を使用して薬剤師の対物業務を減らし、薬剤師でなければできない対人業務や薬物療法の管理に時間を割く体制づくり
に力を注いでいます」(甲斐氏)
棚卸しにも活用可能、職員の負担を軽減
 積極的なシステム化への取り組みの一環として、千代田病院薬剤部は2016年11月に、株式会社クカメディカルが提供する調剤ミス防止システム「ミスゼロ子」を導入した。ピッキングした医薬品のバーコードを専用端末で読み込むことにより、処方箋データと瞬時に照合する仕組みになっており、間違いがあると、警告音と表示で知らせてくれる。「ミスゼロ子」は分包機メーカーの紹介で知り、他社製品とも比較検討したという。 「『ミスゼロ子』の採用を決めたのは、専用端末を使用していることにより、ユーザーが簡単に電池交換可能でき、メーカー保守や先出センドバックなど充実したサポートがあるのでユーザーに余計な負担をさせない点が大きいです」(甲斐氏) 使い方は簡単で、業務にすんなりと馴染んだ。錠剤の場合は処方箋を見ながら棚からピッキングするタイミングでバーコードを読み取り、注射薬の場合は集計票を見ながら集薬後にまとめてバーコードを読み込んでいる。 導入後はピッキングミスがほとんどなくなった。千代田病院薬剤部が導入時に検証したデータでは、「ミスゼロ子」導入前(2016年1月~12月)と比較して、導入後(2017年1月〜8月)には、規格ミスが12件から1件に減った。この1件も「ミスゼロ子」を使用しなかったことによるものだという。また、類似薬の取り違えが4件から0件、数量ミスは1件から0件になっている。 「薬剤師の安心感が高まりました。抗がん剤などのハイリスク薬も多いのでとても助かっています。業務支援クラークもピッキングをしますが、安心して任せられます」(甲斐氏)
 一方、「ミスゼロ子」導入のもう1つの決め手になったのが、棚卸しに使用できる点だった。千代田病院薬剤部では、年に2回の棚卸しにミスゼロ子を活用している。作業としては、①薬剤のバーコードを読み込む、②在庫数を端末に打ち込む、この2つだけで、あとは自動計算システムと連動して処理されるようにシステムを構築した。簡単にできるため、棚卸しは業務支援クラークが中心となって担当しているという。 「導入後、端末の電池が切れて交換した以外は故障もありません。薬剤師や業務支援クラークの負担を大きく減らしてくれるのはもちろん、調剤ミスのリスクから患者さんと職員を守るツールとも言えます。もはや『ミスゼロ子』なしでは仕事をしたくないというのが実感ですね」と甲斐氏は笑顔で話す。

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